コーヒーは魅惑的な液体だ。

香ばしさと一言で言い表すにはもったいない豊かな芳香、苦みの向こうに見える酸味と甘みの絡み合い、そしてカフェインという集中力のための妙薬。

人々を魅了するこの飲料の需要が増加するのも当然だと言えるだろう。 また昨今の気候の変動はコーヒーの実の生育に悪影響を与えているらしい。 だからコーヒー豆の価格は上がっている、しかも日本の購買力が落ちているから手に入れにくくなりかねないと聞いてもあまり疑いはしなかった。

現代人の精神を慰撫する我らがカフェインは合成方法が確立しており、コーヒーとお別れすることになってもまだ手に入るだろう。

それよりも、このミルクに合う熱くて苦い飲み物だ。

アルコール飲料を主義の問題で摂取しない筆者にとって、コーヒーは重要な嗜好品だ。

だから、ここしばらくはコーヒー豆が手に入らなくなった時のためのトレーニングとしていくつかの飲み物を試してきた。

今日はこのささやかな研究結果を発表したい。

たんぽぽコーヒー

まずはコーヒーの代用品として一番有名だと思われるたんぽぽコーヒーだ。

たんぽぽはまずい。

どうまずいかというと、煎じ薬のような…つまり漢方薬の味がする。 少なくともいやぜったいこれはコーヒーを模した味ではない。

ドイツでは第二次世界大戦時に代用コーヒーとしてよく使われたそうだが、たんぽぽの根という地中深くに伸びたしろものを大変な思いをして掘り返してこんな漢方薬くさい飲み物を煎じていたかと思うと頭が下がる。

なおたんぽぽの根は本当に漢方薬として使われているらしく、母乳の出がよくなる効能があるそうだ。

そう言われると、なんとなく滋味溢れる味のように思えてくる。

お乳を出す予定もないから、ありがたくないが。

オルヅォ

オルヅォはイタリアの大麦麦茶である。

紅茶店であるルピシアで取り扱われていて、ルピシアお得意の着香されたものがいくつか用意されている。

オルヅォのいいところは、牛乳とよく合うことだ。 ルピシアではミルクで抽出することを推奨しているくらいである。

これは、おいしい。

いいところは香りづけのおかげで麦っぽさがうすれて麦茶嫌いの筆者でも違和感なく飲めることだ。 キャラメルハニーやモカの香りのものが好みで、ミルクティにすると砂糖を入れずともお菓子のような気持ちになる。

しかし、これがコーヒーの代用かと言われると少し難しいように思う。

濃く出しても苦味が少なめだからだ。

甘いものを口にしたい気持ちの時はとてもいいものではあるが。

Kawa zbożowa(穀物焙煎飲料)

これの総称を知らないので、ポーランド語をそのまま書いた。 発音はカヴァ・ズボジョヴァ…に近い。 意味は穀物コーヒー。

つまり、ライ麦・大麦・チコリその他いろいろの穀物や何かを炒ってブレンドして、インスタントコーヒー状にしたものを言うらしい。

社会主義圏だったからか代用品の伝統が長かったポーランドはなかなか出来のいい代用コーヒーを作り出したらしい。

日本のインターネットで買えるブランドには、InkaやBiopurがある。 その中でもBiopurが筆者のお気に入りで、麦芽が入っているからか大人用の甘味なしのミロのような雰囲気がある。

牛乳を入れてもいいし、ブラックでも少しの苦味とうっすらした甘さが感じられておいしい。

手に入れにくいのが難点だが、かなりのお気に入りである。

ありがとう穀物。ありがとうポーランド。

いかがでしたか?

今回はここ1年で試してみた代用コーヒー飲料について書いてみた。

コーヒー風に楽しめる飲料はたくさん考案されており、健康志向のおかげで今でも市販されている。 もしコーヒー豆が手に入らなくなっても、今のうちに慣れておけば筆者は耐えられそうだ。

香ばしい番茶を飲みながら、本日分のカレンダーを終えることにする。