数学者たちの黒板という写真集がある。一人の数学者につき一枚の板書を撮影した写真その解説や数学に関するエッセイ、という体裁の本で、黒板には難しそうな数式やグラフ・図などが書かれている。黒板の内容は正直に言うとほとんどわからない…唯一大学の詩経の引用を書いた物だけは理解した…のだが、黒い地(この本に載っている黒板は多くが「緑の黒板」ではなく、「黒い黒板」である)に白や黄色のチョークで「何か難しいこと」が書かれているのは鮮やかで美しかった。彼らはこの黒板で数学を生み出し、仲間たちと議論するのだという。
ハイコントラストで簡単に書いたり消したりができるアイテムが便利なのは、職場で使っている「電子メモボード」で実感していて、自分の部屋にも黒板があれば、かっこいいだけでなく勉強が捗るのではないか、という気持ちになった。(書いた内容を議論する勉強仲間は残念ながらいないのではあるが…)
さて、黒板を作るのには何が必要か? 一つは支持体で、つまり木やスチールの板。もう一つは黒板塗料やチョークボードペイントと言われるペンキで、これを塗るとチョークで書いた跡が消しやすい表面になる。あとは塗料を塗るための刷毛もしくはローラーとか、下地材とか、壁に止めるための鋲だとか紐だとかだけど、そのような細々したものは支持体や壁の素材によって違うだろうから省略する。
今回、支持体にはIKEAのスヴェンソースというスチールのメモボードを使った。これは、たまたま黒板だと勘違いしてブラックボード(白い専用ペンなどで書いたり消したりできるが、チョークには適していない)を買ってしまったのを再利用しようと思ったのであって、特に何か利点があるわけではない。支持体の素材はチョークでの書き味に直結するため、やわらかい書き味が良ければおそらく木の合板を選んだほうがよい。筆者の黒板は書く際にかなりカツカツと音がする黒板になった。
少量から手に入れやすい黒板塗料はターナーのものとタカラ塗料のもののようである。どちらも様々な色がラインナップされていて、黒・緑以外の黒(?)板も作成できる。京都にはタカラ塗料の実店舗があり、ラインナップのすべての色が見せてもらえた。グレーや茶色も面白く感じたが、結局ごく普通の黒板がいいだろうということで、黒(商品名はスキッドインク)を選んだ。 塗料を塗るのは思ったより簡単で、刷毛で伸ばすと乾くまでは多少塗り筋ができるが二度塗りして乾くとほとんど違和感がない表面になった。公式の塗り方にサンドペーパーで表面をならすように指示があったので、サンドペーパーも購入したが、ほとんどバリのようなものもできなかったため必要がなかった。白いチョークで太めの線を引くとやや塗った方向に筋が見えるが、気にならない程度である。
↓のリンクに完成した黒板の画像がある。
このように暗記したい文章を書いておいたり、漢文の句点をどう打つか試行錯誤したりするのに使っているが、簡単に消せるし文字が見やすいのがとてもいい。サイズがもう少し大きければよかったようにも思うので、追加でチョークボードペイントを購入してもいいかも知れない。
以下は黒板の付属品についてのメモ
チョークの素材は焼き石膏のものと炭酸カルシウムのものの二種類がある。焼き石膏のチョークの方が柔らかく、黒板本体が長持ちするが、粉が多い。炭酸カルシウムのチョークで特に粉の出にくい製品はダストレスチョークの商品名で販売されているが、粉が全くでないわけではない。
チョークは文房具を取り扱っている店のホワイトボード用品のコーナーに置かれていることが多い。しかし黒板消しを置いている店はなかったので、『数学者たちの黒板』に書かれていた「黒板消しには布を使うと粉が飛び散らないのでよい」というアドヴァイスに従った。白いチョークを消すためなので、汚れの目立つ黒っぽいウェスを使うのがよさそうである。